筆者の評論

映画「GODZILLA」鑑賞・レビュー

ローランド・エメリッヒ監督。ディーン・デブリン脚本。主演マシュー・ブロデリックの映画「GODZILLA」を鑑賞したのでレビューする。

※僕のレビューはネタバレを含む場合があります。興味のある方のみご一読ください。

ポリネシアにてフランスが行った核実験。その影響で突然変異を遂げた爬虫類「ゴジラ」が、ニューヨークのマンハッタン島へと姿を現す。放射線による生物の変化を研究する主人公「ニック」は、謎の巨大生物について調べるよう米国務省からの要請で調査を開始。独自の進化を遂げた大型爬虫類が、マンハッタン島へ巣を作りにきたことを突き止める。同じくしてゴジラの退治を望む、フィリップ(ジャンレノ)率いるフランスの部隊と合流し、ニックは仲間と共に、ゴジラの巣を探し出すことになるのだが……。

映画「GODZILLA」あらすじ

大昔、ゴジラ好きの青年として観たのが僕の最後の記憶だ。作品を観た当初は非常に困惑し、嘆いていたような気もするが、それもひとえに”ゴジラという概念”が根強く心に植え込まれていたからだろう。簡単に言うと「こんなのゴジラじゃない!」と、残念な気持ちになっていたわけだ。

しかし、今となってみれば、そんな固定観念は映画を観る上で邪魔にしかならない。しっかりと作品と向き合ってみようじゃないか。ということで、時を経てゴジラという概念をとっぱらった上で鑑賞してみることにした。

結論から言わせてもらうが、非常に面白い作品だった。

怪獣パニック映画としてはまさしく王道を貫くエンターテインメント。なぜ救出された老人が「ゴジラ」と呟いたのか。ゴジラよりも軍隊の方がニューヨークを破壊しているところ等々ツッコミどころは多岐に渡るが、それでもなぜこの作品が面白かったのか。それは、特に頭を使うことなく楽しめる娯楽作品として完全に成立されていたからだろう。

観客に考えさせる作品が多い中、なかなかスカッと楽しめるハリウッド映画は少なくなってきたように思う。僕の浅はかな記憶でも、はちゃめちゃに繰り広げられる脳筋映画は昔の方が多かったと思う。ベタな作品こそ大衆心理にダイレクトアタックできる。まさに映画「GODZILLA」は、ベタベタを地で行く娯楽作品だった。

開き直って観てみると、後半の恐竜映画感が逆にめちゃくちゃ楽しめるではないか。主人公御一行は、地下でゴジラが大量に産んだ卵を発見し、タイミング悪く生まれてきたミニゴジラたちと鉢合わせてしまう。親ゴジラの蓄えた好物の魚が周囲にあったことから、魚の臭いが主人公たちにもついてしまいミニゴジラは餌と勘違いし、ジュラシックパークにおける対ヴェロキラプトル並の逃走劇が始まるのだ。親ゴジラが早々に撃退?されてから始まる後半戦のほとんどが、そのミニゴジラから逃げ惑う時間に割かれていた。最早、ゴジラとはなんなのかわからなくなる演出だ。

個人的に、ジャンレノ演じるフィリップの”祖国のためにツケの精算に来た”愛国心的な最後はグッとくるものがあった。基本的に、いい意味で登場人物全員にバックボーンが少ない中、フィリップだけは背負っているものの重みが明らかに違う。怪物を生み出してしまったがゆえに”退治する”ためだけにやってきた信念は、何としてもゴジラに打ち勝つと闘志を燃やす初代ゴジラの芹沢博士を彷彿とさせた。

人間がいかに醜い生き物なのかは「ゴジラ」に共通するテーマだ。人類の過ちで生み出してしまった悲劇の怪獣。映画では大袈裟にモンスターとして表現されているが、日々、世界各地の不条理により、モンスターとなった人間が生み出されている。ゴジラという作品は、人類に対するアンチテーゼなのだ。日本のゴジラとは違い、今作のゴジラは食べ物を食べるし子に対する愛もある。地球に住む一つの生命体として根を下ろし、ただ純粋に、生きるため、育てるために人間社会へやってくる。そこに悪意も敵意も存在しない。その証拠に、主人公ニックと初対面するシーンでは無益な殺生はせずに立ち去っている。しかし、子を殺されたと知った瞬間、うちなる牙は途端に人間たちに矛先を向けるのだ。

攻撃をするからこそ、攻撃によって報復を受ける。そんな当たり前でも認識できていないことを映像で表現したのが、今作の映画「GODZILLA」の本質なのだと僕は思う。物事には理由があるという普遍的な事実を知ろうともせず、一方的に淘汰する。最後に生き絶えるゴジラとニックが目を合わせる瞬間。人類のどうしようもなく腐り果てた遺産が悲しみとなって胸を掴み掛かってくるのだ。エンタメである一方で、僕は観ていてどうしてもやるせない気持ちになった。

曰く付きとなってしまった映画「GODZILLA」だが、安心してほしい。しっかりとテーマもあるし娯楽作品としても上質な仕上がりとなっている。気になっている方や、遠い昔に一度観た方も、是非ともこの機会にご鑑賞いただきたい。もうまもなく山崎貴監督による新作映画『ゴジラ-1.0』も11月3日公開される。彼の者の咆哮をスクリーンで再び拝むのは、大型爬虫類GODZILLAに触れてからでも遅くはないだろう。

それではまた。

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