監督:ジェシー・ネルソン脚本:クリスティン・ジョンソン 、ジェシー・ネルソン、主演:ショーン・ペン、ダコタ・ファニングの映画「アイ・アム・サム」を観たのでレビューしていく。
※僕のレビューはネタバレを含む場合があります。興味のある方のみご一読ください。
主人公サムは知的障害により7歳児と同等の知能しか持ち合わせていない。サムはその娘にルーシー・ダイアモンドと名付けた。 ルーシーは徐々に父親サムの知能を越えて成長したが、娘と同等かそれ以下の知能しかないサムは今後のルーシーを育てる養育能力が無いのではと指摘されてしまう。ルーシーは施設で保護されることになり、サムは失意にくれる。父親サムはルーシーとまた一緒に暮らす為、法廷で闘う決意を固め、エリート弁護士のリタに依頼する。自分が社会奉仕の仕事もできることを見せつけるために無償で弁護を引き受けたリタだったが、どう考えてもサムには不利な裁判。彼の障害者の友人たちは裁判で普通の証言ができず、外出恐怖症の隣人もその壁を乗り越え証言台に立つが、相手の検察官にやり込められてしまい……(引用元:Wikipedia)
映画「アイ・アム・サム」あらすじ
この映画を一言で言えば、自分の心の汚れが見えてしまう鏡のような作品だ。
あらすじにもある通り、主人公のサムは知的障害者であるがゆえに、社会的な秩序のもとで生きていくにはハードルが高い。しかし、今作で描かれているサムは、職場や友人関係に恵まれており、皆がサムのために最善の手助けを行なっている。ひとえに、サムの心のピュアな部分が周囲に影響を与えているからだろう。さながらフォレスト・ガンプを観ているような感覚だった。
冒頭、サムの娘の「ルーシー」が生まれた途端、生みの親である女性はサムとルーシーを置いてそそくさと逃げていってしまう。女性との関係の詳細は明かされなかったが、サムは広場恐怖症の友人「アニー」の力を借りながらルーシーを育て上げていく。知的障害といった部分であらゆる心配はあったものの、劇中のルーシーはとても優しく、幼ながら大人な精神力を持ち合わせていた。賢い頭脳は7歳の知能を持つ父親を娘として助けるために自然と培われた反面。”父より賢くなってはいけない”といった、偏った親孝行が成績へと悪影響を及ぼしていく。サムとルーシー両方が健気な努力を積み重ねていく様に心が揺さぶられた。しかし、二人の思いやりが、のちに裁判沙汰へと移行していくわけだが……。
僕がこの作品で一番大事だと思ったポイントは、知的障害者に対する思いやりでも多様性のことでもない。いかにシンプルに生きるかが人生の幸福につながると考えさせられたことだ。
自分の心の汚れが見えてしまう鏡のような作品と話したが、劇中のサムはとにかくシンプルに生き、そのシンプルさに全力を尽くしている。サムの姿を見ているうちに、果たして自分はここまで素直に、目の前の事に100%の想いで打ち込めているのか疑問に思った。この疑問が、映画「アイ・アム・サム」という作品は心の汚れが見える鏡だと例えた理由だ。
僕らは妙なベクトルで賢くなってしまっている。言葉を変えれば狡猾だ。平気で嘘をつくし、平気で逃げてしまうが、残念ながらそれで幸せを掴み取れている人間は少ないように思う。僕は常々「知識は恩恵であり呪いである」ことを話しているが、それは多くの人間が知識を呪いに変換し間違った使い方をしてしまっていると感じているからだ。
サムもフォレスト・ガンプも、シンプルに生きているからこそ、周りの人間が快く力を貸してくれて、友人や恋人、仲間に恵まれているのだろう。
面白いのは、父親のサムよりも幼い娘のルーシーの方が知識を呪いに変換してしまっているところだ。一般的な頭脳を持っているがために、父の顔に泥を塗らないようにと”わざと頭を悪い娘”を演じるが、ルーシーの好意は結果的にサムと引き離される運命を手繰り寄せてしまう。善良な人間は善意で知識を使い、上手くやり込めるよう仕組む。だが所詮は一時凌ぎにしかならず、最終的に清算を求められることになるのだ。
僕が「アイ・アム・サム」から感じたのは、人は知らないところで他人に素直さを求めていること。そして騙し合いでしか成り上がれない競争社会において、大切な人には常に素直でいなければならないというメッセージだ。自分や家族が最期の砦であり、そこの信頼や絆だけは素直さでしか守り抜けない。僕らはくだらないヒエラルキーに支配されてしまっているため、当たり前であるシンプルイズベストがわからなくなっている。僕個人から言わせてもらえば、サムはただの知的障害者として描かれているのではない。彼の生き方は僕らのお手本として描かれているのだ。
生きづらく感じているあなた。心を見失っているあなたこそ、是非とも映画「アイ・アム・サム」をご鑑賞いただきたい。
心の中で放置されているあなた自身が見つかる、良いキッカケになる映画だ。シンプルに生きて、掴むべき幸福を見つけよう。
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