本「賢者の書」読書レビュー

著者「喜多川泰」さんの「賢者の書」を読了したのレビューする。僕のレビューは、思考の整理整頓と個人的に感銘を受けたポイントを押さえていくものなので、本の要約記事ではないことをご理解いただければ幸いだ。

ちなみに、喜多川さんの本は前回「手紙屋」も読んでレビューしているので是非ご一読を。実は前に「運転者」も読んだことがあるので、そちらもまた改めてレビューしようと思う。

さて、実のところ「賢者の書」を読むのは2回目となる。話は数日前に遡るが、知人にこの本を勧めてもらい読もうとしたところ、開始数秒でおぼろげながら読んだことがあるような感覚に陥った。これはもしやと思い記憶の図書館を探ること数分。僕は以前に、この本を読んだことがあったことをすぐに思い出したのだ。とは言うものの、内容はとても覚えていると言い難かいレベルだったため、これではいけないと思い立ち、再読することになったというわけだ。

「そうだったそうだった」と懐かしさと感銘を受けたポイントを思い返しながら読む「賢者の書」は、前回よりもグッと胸に落とし込めたように思える。一回めの読了から目まぐるしく生きてきたため、前より人生観が少し変化したのかもしれない。

すべてを諦めて生きていた主人公のアレックスは、ふと思い立って故郷に帰ったことで、謎の少年サイードと出会う。サイードは9人の賢者から教えを乞うために長い長い旅を続け、ようやく最後の賢者がまつとされる場所へと辿り着いた。しかし、どこを探せど賢者はおらず、いるのは正気を失っているアレックスのみ。仕方なくサイードは、これまで賢者から教えられた貴重な知識が記された「賢者の書」をアレックスに読んでもらい、その間に旅の疲れを癒すため眠りにつくことにする。そこに記されていた内容は、アレックスの５０年間にも及ぶ人生観をひっくり返すほどの衝撃的なものだった。

内容は、サイードの冒険譚をアレックスが読者として読んでいくことで展開される。賢者は、人生の舵取りは総じて自分次第である事をさまざまな視点で説いていき、不運になるのも自分のせい。となれば、自分の力で幸せになる事だってできる事を強く優しく語りかけていく。

物事は成功と失敗ではなく、自身の人生に必要となるピースを集める作業に過ぎない。僕らは失敗を恐れて行動できなくなることがよくある。そう言った世間体も相まって、夢に向かって挑戦する事を躊躇う人間も少なくない。この世に完璧など存在しないことをわかってはいても、やはり”失敗”という二文字をどうしてもスルーすることはできないのだ。だが、幸福に生きるためには、この失敗でさえも必要不可欠なピースなのだと賢者は話す。火は触ってみるまでは熱くて危険なものだとわからない。それと同じように、行動をして初めて理解できる事象が数多くあり、そうやって知識を埋めていくことによって、やがては壮大な自分だけのパズルが完成するのだと。

人生のパズルは自分だけのものだから、そのピースを埋めるか埋めないかを決めるのも自分自身。そして、どういう言葉を使うのかも自分の未来を決める鍵となる。僕らに降りかかる困難は何もかも、僕らが幸せになるために与えられた課題なのだ。その課題と向き合うのか、それとも乗り越えるのか、迂回するのか、僕らには自由に決める権利がある。でも、その舵取りを怠って（もしくは舵を握っていることに気づかず）自分の不運を環境のせいにし、人生を丸投げしてしまう人がほとんどだ。「自分はダメな人間だ」「お金がない」なんていつまでも口にしていると、本当にダメでお金のない人間になってしまう。

人間は食べたもので体が仕上がっていくもの。それと同じで、話した言葉や夢の見方ひとつで人間性も大きく変えることができるのだ。ならば、ポジティブな発言を心がけ、自分に足りなかったピースを与えてくれる人間たちに敬意を払い、粛々と自分自身を愛し敬っていく人生を歩む方が有意義ではないか。

サイードと賢者の一言一言が心の琴線に触れる啓発的ストーリー。この本を読めば、あなたを幸福へと導く賢者の書も、もしかしたら見つかるかもしれない。

それでは、また。