本「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか　スピードは最大の武器である」読書レビュー

著者「中島聡」さんの本「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか　スピードは最大の武器である」を読了したのでレビューしていく。なお、僕のレビューは、思考の整理整頓と個人的に感銘を受けたポイントを押さえていくものなので、本の要約記事ではないことをご理解いただければ幸いだ。

「時間がない」と口癖にしている人にはうってつけの内容であることは先に述べておく。この世には人間の都合に準えてありとあらゆる概念が生まれているが、その概念も、僕ら側が支配してこそ効力を発揮するものだ。「時間」という概念も、その最たるツールの一つだろう。その時間を徹底的に支配する術を体得したのが本作の著者であり、Windows95を開発したプログラマー「中島聡」さんというわけだ。

「嫌なことをしないためにはどうすればいいのか」。中島さんが時間について考えだしたのは小学時代。誰もが後回しにしがちである夏休みの宿題で時間という課題と向き合ったという。単純に、早々に宿題を終わらせればあとは好きなことに時間を費やせるという、当たり前の計算式に気が付いたという話なのだが、その体験からより深く時間というツールの使い方を分析し、自身の仕事に体系化していったのが「ロケットスタート時間術」という方法である。

僕もどこかの記事で「ロケットスタート時間術」に関して書いたが、要するに、仕事を受注してからすぐに8割型の作業を終わらせてしまうという方法である。

受けた時点で、他の作業は脇に置いておき、まずはその依頼に対して徹底的に向き合うのだ。何がなんでも8割を完成させてしまえば、製品を納品できる具体的な期限を提示することができる。その時点で8割完成しているため、残りの作業が落ち着いて流しながらこなすことができ、他の仕事との両立も可能となり、時間に追われるというストレスを極力まで回避して仕事に打ち込めるようになるわけだ。

成功哲学の本ではよく聞く話だが、僕ら人間は完璧を求めて仕事をしてしまうため、できる上がるまでに膨大な時間を費やしてしまう。だが、それだけこだわって仕上げたものが修正をくらえばどうなるだろうか？綿密に構成されてしまった仕組みを解体することは非常に困難を極めるため、細かな修正に対応することは事実上不可能に近い状態となっているだろう。もっと悪くすれば、一度破壊して作り直す羽目になってしまい、納期を再び伸ばさなければならなくなるという絶望的な状態に陥る。だからこそ、どんなに粗い状態でもいいから完成主義となって仕上げることが大事だと話しているのだ。

僕らが使っているMacBookやWindowsも、初めから完璧を求めて制作されておらず、多少荒削りであったとしても納期を守り、世に出している。だからこそ、後からアップデートをして粗い部分の埋め合わせをし、道すがら完璧な製品へと近づけていっている。ビジネスにおいては、こだわりよりも約束を守るということが何よりも大事なのだ。

この本にはいかにすれば仕事に没頭できるのか詳細に綴られており、その方法は誰もが真似できるものばかりだ。僕も内容に感銘を受けて、以前よりも数倍早くタスクをこなせるようになってきた。もちろん、その際はこだわりを捨てて、とにかくまずは完成させることに重きを置いている。

納期を守らないことで起こる弊害は、自身の信頼を失うことだけにとどまらない。自分の仕事をなくすだけではなく、遅れたことで周囲の人たちの時間までも侵食し、波及してさらに多くの人の人生を狂わせることになるのだ。大袈裟に聞こえるかもしれないが、僕らひとりの行動はそれくらいの影響力があることを念頭においておかなければ、時間と面と向かって協定を結ぶことはできない。仕事のやる気が出ないのも、それは、やる気が出るような時間の使い方ができていない証拠なのだ。

仕事に没入感を得られさえすれば、不思議なことに僕らの脳は快感を覚えるようになる。その状態に近づけるために必要なのが、兎にも角にも「ロケットスタート時間術」なのだ。個人差はあるかもしれないが、まずはこの本を一読していただき、自分なりの時間術を身につける参考にしてみてはいかがだろうか。僕と一緒に、もっとできる人間になろう。

それでは、また。