筆者の評論

映画「エスター ファースト・キル」鑑賞・レビュー

監督:ウィリアム・ブレント・ベル 主演:イザベル・ファーマンの映画「エスター ファースト・キル」を鑑賞したのでレビューしていく。

※僕のレビューはネタバレを含む場合があります。興味のある方のみご一読ください。

孤児院から養子として、ある一家に迎え入れられた少女エスターが巻き起こす恐怖を描いたホラー「エスター」のシリーズ第2弾。エスターが孤児院に入る前の前日譚が描かれる。裕福な一家、オルブライト家の一人娘で6歳のエスターが行方不明になってから4年の月日が流れた。ある日、エスターが見つかったという朗報が警察から届けられる。父、母、兄は数年振りの再会という奇跡にこの上ない喜びを感じ、10歳に成長したエスターを迎え入れる。再び4人そろって幸せな生活を送ることができる。家族の誰もがそう思っていたが、4年ぶりに戻ってきたエスターは何かが変わってしまっていた。

映画「エスター ファースト・キル」あらすじ

以前に鑑賞・レビューした映画「エスター」の続編であり、前日譚。

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ホルモンの病により、外見が9歳で止まってしまった実年齢31歳の凶悪殺人鬼。見た目を駆使した巧妙な策略で、次々と人をいとも簡単に殺害していく。今作は、前作の主人公であるケイトの家にやってくる前。つまり、一作目でエスターの出所と真相として登場した精神病棟や、火事で全焼したオルブライト家で何が起こったのかを描かれている。

まず、イザベル・ファーマンが再び9歳児の役をこなす勇気に讃美を送りたい。しかし、やはり顔の輪郭的に少々無理があるように見えてしまい、身長以外はとても9歳児には見えないところが残念であった。やはり流る年月には叶わない。

それはさておき肝心の物語についてだが、意外性のあるミスリードが個人的にとても楽しめた。結論から言うと、今作にはエスター以外にもサイコパスが二人存在する。サイコパス同士の心理戦が繰り広げられるところは、予想とは少し違った展開でワクワクさせられた。いい人間ほど騙され不幸になるという世知辛い現実を沸々と思い起こさせる皮肉な真相。その嘘によって幸福を勝ち取ろうとするエスターとオルブライト家の戦いを観ていると、どちらの味方にもつきたくなくなる。共感できる者と言えば、物語の中で唯一の良心であるアレンくらいしかおらず、観る側はサイコパスたちの死闘に良い意味で退きながら、どのような残酷な結末を迎えるのか心待ちにして楽しめる作品となっている。

ただ、前作のエスターほどの名作感があるかと聞かれれば、答えは個人的には否だ。

と言うのも、この物語から得られる教訓、感動というものが、主人公のエスターや登場人物から伝わってこなかったからだ。強いて言うなら、良心であるアレンのような際限の無い素直さは不幸を招くということくらいだろう。

エスターという作品は、エスターの驚愕の正体が最初からわからないからこそ魅力的であり、既に何者かわかってしまっている時点で、それを上回る刺激を観客に与えることは至難の業だろう。あくまでも僕の感想なので真に受けないでほしいが、エスターは続編不要の映画作品だったと思っている。面白くなかったわけではないが、そこから得られるものと体験に物足りなさを感じた次第だ。

物語の創作においては必須の課題だが、”なぜ、続きを作る必要があるのか”をマネタイズ抜きで考えなければならない。人気があるからというだけでの創作は、結局のところ中身のない空っぽの芸術作品しか生まない。やはり、その物語にどのようなメッセージを込めて発信したいかが創作者の肝となってくる。人の記憶に残る作品作りは非常に大変な作業だが、エスター ファースト・キルに至っては、テーマ性が欠けてしまっているような、そんな気がした。

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創作者目線で偉そうに語ってしまったが、作品自体は非常に面白かった。サイコな殺人鬼。リーナがエスターに成る過程を恐怖とドラマチックに演出され、過去作を知っている人からすればニヤリとするシーンも多々あった。

映画「エスター ファースト・キル」は、各配信サイトで視聴可能だ。

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