筆者の小説・詩

実話怪談「火傷」

ある女性から聞いた話だ。まだ中学生ぐらい頃。彼女含める4人の兄妹は、両親と共に仲睦まじく一つの家に住んでいた。就寝時は、ふすまを隔てて二部屋に別れて眠っていたらしく、その日は彼女が両親と同じ部屋で眠り、弟は隣の部屋で眠りについたという。

深夜。彼女は足の甲に強烈な痛みを感じてたまらず飛び起きた。本人は”虫に噛まれた”と思ったらしく、眠りを妨げられたことに苛立ちを感じるも、痛みに打ちひしがれる前にある異変に気がついた。隣の部屋が、どことなくオレンジ色に光っているように見えたそうだ。そのオレンジ色の光は、ふすまの奥からではなく、ふすま全体に広がっていたという。痛みもそこそこに、彼女は少しだけ開いていたふすまから隣の部屋をそっと覗いて見ることにした。すると、就寝している弟の頭上で、火が燃え上がっていたそうだ。にも関わらず、弟は催眠術にでもかかっているかのように眠り続け微動だにしない。

慌てて彼女は両親を起こし、手早い消化作業のおかげで、弟も家も大火事にならずに済んだという。父親が彼女に「おい、なんで火が上がってることがわかったんや」と聞くと、そこで彼女は、虫に噛まれて目が覚めたことを思い出し、その状況を事細かく両親に打ち明けた。証拠を見せようと、噛まれた後を見せようとしたその時。彼女は自分の足に不可解な痕跡が残っていることに気が付く。

虫に噛まれていたと思っていた足には、小さな火傷の痕が残っていたそうだ。ちなみに、小火が起きたのは隣の部屋であって、彼女が眠っていた部屋までは火が届いていない。だが、彼女の感じた強烈な痛みは、虫のせいではなく、火の熱さによるものだったのだ。

この火傷はいったい何だったのだろうか。もしかすると、なんらかの存在が、小火が起きていることを知らせたかったのかもしれないと、彼女は当時の記憶を遡りながら話してくれた。その火傷の痕は、今でも生々しく彼女の足に残っている。

※この怪談は一次情報です。

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