著者「喜多川 泰」さんの「手紙屋」を読了したのでレビュー。なお、僕のレビューは、思考の整理整頓と個人的に感銘を受けたポイントを押さえていくものなので、本の要約記事ではないことをご理解いただければ幸いだ。
漠然と将来を考えながら、遅れをとっていた就職活動に勤しむ主人公。そんな主人公が「手紙屋」という文通をやりとりすることを生業としている存在と出会い、自身の抱えている悩みや葛藤などを手紙でやりとりしていく。正体不明の手紙屋から返ってくる手紙の内容は、包容力がありながらも核心をついたアドバイスばかり。やりとりは「十通まで」という制約の中。主人公が少しずつ生き方について真剣に考えていくようになり成長していく物語だ。
全体的に読みやすさを重視して執筆されているからかとにかくスラスラと読めてしまう。ゆえに大切な部分を見過ごしてしまいそうになるが、その点は著者の伝えたいメッセージが随所で目立つように構成されているため、物語への没入感は失われていない。
本書のテーマは、どういったビジネスが儲かるかでも、どうすれば転職ができるのかというビジネス書のような方法論は記されていない。お金という紙切れに翻弄される僕らに、あらためて「働く理由」を問いかける心のカウンセリングを目的として描かれた物語だ。ただお金を儲けたいのか? 大企業に勤めることで尊厳を保ちたいからなのか? それとも、なんとなく大学を卒業するから就活しているだけなのか? 様々な動機があると思う。だが、そんなことよりもっと大切なものがある。それは、僕らが何がなんでも叶えたい夢のために燃やす情熱のことである。
どうしてその仕事に打ち込みたいのか。そこで働いた先に望んだ未来があるのか。本の中で展開していく主人公と手紙屋の文面は、まさに生き方について目まぐるしく思考を巡らされるジェットコースターのようなものだ。読んでいると、中身のないすっからかんな人生ではなく、僕やあなたが「ここにいる理由」について意味付けを促してくれる講師がそばにいるような感覚に陥る。そう、まさに僕ら自身が主人公となって、手紙屋と文通をしているように錯覚するのだ。
僕らの抱いている夢がもし実現すれば、実現した未来で応援してくれる幾人もの応援団がそこにいるはず。手紙屋は、まだ存在し得ない応援団のことを想像して物事に打ち込む情熱を養うことを説いてくる。僕が本書で感銘を受けたのはここだった。ただ、働くのではなく、誰かのために働くこと。働くことで成し遂げたい未来があることを、どうしてか僕らは忘れがちになる。お金に困っていたりすると、途端に余裕がなくなり、目先の利益ばかりに目が眩んでしまうのだ。残念ながら、お金にはなんの価値もない。価値があるのは僕やあなた自身の心であり、その心が他者の心を揺さぶることに成功した時に、初めてお金という媒体が介入してくる。お金はあくまでもツールに過ぎない。本当のところは、大昔の物々交換こそが、僕ら人間が対等に幸福を分かち合える方法だった。なんのために働くのか? その先には何が待っているのか? 人のために仕事を作り、人のために働く。人のためだった仕事は自分のためとしても効力を発揮し、幸福感を分かち合うことができるようになってゆく。想像力を駆使して、情熱を燃やし続けることが、世界をより良くし、人々を救うことができるのだと学べた一冊だった。
主人公と正体不明の手紙屋の関係性にも注目。ラストは涙腺が緩んでしまうことは間違いないだろう。
理想論だし、そんな甘い考えでは厳しい世界を生き抜けない!と思う人もいるかもしれない。だが、僕はそんな甘い考えにこそ、幸せの本質が眠っていると思っている。甘くとも良いではないか。せっかくこの星に生まれてきたのに、どうしてみすみす苦しい思いをしなければならないのか?と。 僕らには幸せになる権利がある。他人にだって、幸せになる権利がある。だったらお互いにその権利を行使して、世のため人のため、そして自分のために、自信の持っている情熱と技術で世界を救う航海へ漕ぎ出してみようではないか。
また、手紙というところが一つのポイントだ。
主人公は紙に自分の意見や報告を書いて送り続けることで、知らず知らずのうちに頭の中の情報をアウトプットしていく。手紙屋からの長文をインプットしたら、今度はその情報を咀嚼して返事を書いていくわけだ。パソコンのタイピングやiPhoneのタップよりも、紙媒体に文字を書く方がアウトプットの質が向上するという研究結果もある。手紙屋とのやりとりを通じて、主人公は着々と成長し、自分の思考を確かなものへと形作っていくのだ。僕も、大事なことやアイデアは手書きでメモをするようにしている。忘れてしまっても構わないように、とにかくなんでもいいから書いていくのだ。するとどこかのタイミングで、点と点が繋がる瞬間が訪れる。文字を書く行為は、田んぼや野原に種を蒔くことと同じで、その種はいつか芽吹き、豊かな恵みとして僕らに恩恵を与えてくれるようになる。
競争社会の中。生き急いで破滅を招きがちな人類に警笛を鳴らすような一冊。是非とも、ご一読いただければと思う。
それでは、また。
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