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同じアーティストであるならば、ファンや大衆の感想を聞いて一喜一憂してしまうことは往々にしてあると思う。中には心無い意見を飛ばし、傷ついたり悩んだり、怒りを露わにしてしまう方も多いだろう。今回は、そんな世論の発言に対して僕が思っていることを記す。

まず結論から言わせてもらうと、世論に間違いというものはほぼほぼないと僕は思っている。物事は受信側が感じたことを答えた時点で、対象に対する”情報”が確定するからだ。要するに、その人が感じたことが”すべてになる”のである。例えば、僕のステージを観て楽しいかったファンがいたとする（いてほしい）。僕としてもそれはとても嬉しいことだし、歌手冥利に尽きる感想だと迷いなく言えるだろう。だが、反対につまらなかったと話すファンがいたらどうか。悲しいことではあるが、残念ながらそれも”正しい答え”として在り続けることになるのだ。

人類は、無法地帯を避けるべく概念やルールを締結し、大衆をコントロールできるように画策してきた。そのせいで、自分とは異なる意見を述べる者がいると、大半の人間は敵とみなし議論を繰り広げることになる。ルールという名の境界線を除けばこの世界に間違いなんてそもそも存在しないことは考えればすぐにわかる。だが、僕らに備わるプライドという頑丈な城壁は、一ミリたりとも敵の侵入を許さないのだ。

どんなに意にそぐわなかったとしても、僕らは受け入れる勇気を持たなければならない。どこかの記事で書いたが、戦争を反対するのならば、戦争の反対運動をすることは何の解決にもならない。なぜなら、戦争反対という名の戦争を仕掛けてしまっているためである。世の争いが収束しないのは、概ねこのパターンが占めているのではないだろうか。僕なら、諍いや争いが起こるとその場から一目散に身を引き、自身の幸福を探し求めるだろう。

だが、上記のような内容も僕ひとりが抱いた”答え”に過ぎず、正解とは言い難いほど漠然としていて何の効力も持たない。結局のところ、受け手側の感性や価値観、正義感によって解釈が変わってくる。個々人の思考に介入などできるはずもなく、かと言ってすべきではないことも確かだ。

世界に蔓延するアンサーはどれもこれもが独自の正義感によって構成されている。そのために迷いも生じるが、それでも僕らは受け入れ、時に許し、受け流していくしか方法はない。インターネットや仮想世界が拡張されていく現代においては特に、すべての答えを背負おうとすればたちまち鬱などの症状に見舞われる。正解であって不正解。不正解であって世界。僕らの発言は、常に不明瞭なものだと言うことをまずは理解しよう。

量子力学においても、光の粒子は人間の目で監視した時点で、初めてその姿を確定するという。僕らが見ていない時と見た時とでは、その粒子の形は変化するというのだ。これが事実だとするならば、僕らの言葉においても確実な形など存在しないことに納得がいくというものだ。広く考え、いい意味で諦めることで、周囲の意見に翻弄されることは少なくなる。必要最低限の道徳は守らなければならないが、少なくとも、僕やあなた自身が感じたことがすべてで、世界と考えた方がいい。でなければ、生きることが辛くなる環境ばかり作り上げてしまうだろう。

他人の答えは他人のもの。自分の答えは自分のもの。一人ひとりが地球で、独自の世界が構築されている。人の地球に入り込むことになった場合は、小旅行程度に抑えておき、異なる文化を学びにいく気持ちでいる方が安全なのかもしれない。

とは言っても、やっぱり批判されると傷つくしイライラすることもあるが、それもまた、人間だから仕方がない。

それでは、また。