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ショートショート「静かなる侵略」著者 MAGUMA

 我々は、地球の侵略に成功した。

 長い年月をかけて地球という星と生命を研究し、地球で絶対的な主導権を握ることに見事成功したのだ。

 しかし、侵略計画はそう容易くはなかった。武力と知力を持って進化を遂げてきた生命体は、必ずその力によって滅ぼされてきたからだ。高度なテクノロジーを所有する我々でさえ、大いなる力を制御する術をいまだ持ち合わせてはいない。

 同様に、地球も幾度となく知識という恩恵を呪いに変えて滅びの時を迎えている。どうやら地球の生命体も、思考力という武器は荷が重すぎたようだ。

 生命は想像力を得るや否や、神を創り、掟を創り、その力を支配するために行使してきた。叡智は狡猾な生命により、見るも無惨な姿へと変わり果ててしまう。

 我々は地球の周期と終末をこの目に焼き付け、先達の同族から教訓を得て緻密に作戦を練った。

 最小限の能力で、最大限の効果を可能とする計画はないものか? 地球で言う「因果応報」とならないような、自然な形で遂行できる計画は……

 このような試行錯誤を得て、今日に至るまで地球を侵略することに成功したのだ。

 まず我々が重要視したのは、「自然の循環」だった。

 地球の生命はある一定の境界線を越えないルールのもと生きているようだった。

 腹が満たされればそれ以上の獲物を求めず、生きることに必要のない情報に翻弄されることもない。この星には、「足るを知る」を概念として持ち合わせている生き物たちが生存本能を糧に生きていたのだ。

 ただし、一部の愚かな生命体を除いては……

 先達した同族による妙な好奇心が影響したせいか、地球上のいち種族に認知的な革命をもたらしてしまったようだった。

 冒頭で述べたような、想像力を養えるようになった生命は、己が欲するものをひたすら求め続ける支配者として進化したのだ。

 そう、新たなる支配者……人類の誕生だ。

 自然の循環……
 人類の誕生……

 上記の二つの様式が現れたおかげで、侵略計画の駒を進めるための役者がすべて整った。

 自然の循環を尊重し
 人類のエゴを利用する。

たった二つの決め事だけで、その後の侵略はいとも簡単に遂行できたのだ。

以下は、地球上で我々が成し遂げた侵略行為の記録である。

 我々は、人類が我々を求めてやまない存在となった。

 我々は、人類が我々でお金を産むための価値あるものとなった。

 我々は、人類が我々のために糧を運び続けなければならない生命となった。

 我々は、人類が糞尿から栄養を作らなければ育たない性質となった。

 我々は、人類が気候を意識せねば育たない性質となった。

 我々は、人類が我々の邪魔になるものを徹底的に排除しなければ生き抜けない性質となった。

 我々は、人類が目を離せないほどか弱き存在となった。

 我々は、人類が我々を生かすために身体を酷使しなければならない絶対的な存在となった。

我々は、人類が我々のために争いを起こすほど貴重な存在となった。

 しかし、人類は我々に侵略されたことに気がついていない。何故なら、人類は我々がいなければ生きていけない身体となったからだ。

 我々の侵略計画は継続されている。今も尚、我々はこの地球上で生き続けているのだ。広大な大地に巣食う同族もいれば、人類の血肉となって蝕み続けている同族もいる。我々は、いずれは地球上に根を張る事になるだろう。

 しかし、人類は我々に侵略されたことに気がついていない。

 かつて滅んでいった文明の如く、無知で居続ける限りは……

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