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ミニマリスト - 不要なモノを持たない取捨選択の力 -

「人が物を所有するのではなく、物が人を所有するのだ。」

Netflixで配信中の映画「ハリガン氏の電話」(スティーブン・キング原作)で、ドナルド・サザーランド演じるハリガンが口にする言葉だ。鑑賞していた僕は、頭の上から冷水をかけられたような衝撃が走った。余計なものが洗い流された脳内には、「後悔」の2文字が並んでいる。あの日あの時、身を粉にして働いて稼いだお金を「いったい何に使っていたのか?」と。

2年ほど前。僕の周りは物で溢れ返っていた。ブランド物のバッグや服。使うのかどうかもわからない事務用品の数々。「できる男に見られたい」というくだらない承認欲求が物欲を駆り立て、無意識のうちに財布の紐を緩めていたのだ。

僕らは現代に生きる合法的な海賊だ。例え城が立つほどの財宝を集めたとしても、決して満たされることはない。その場凌ぎで埋め立てられた穴からは、すぐに強欲という名の海水が流れ込んでくる。やがて船が沈没すると、所有者は自らが招いた物の波に呑まれながらあることに気がつく。コレクションの宝の山が、取るに足らない鉄屑ばかりであることに。

このままではハリガンの言うように「物に所有される」人生を送ることになる。僕は危機感に苛まれ、回帰すべく急いで身辺整理を始めた。程なくして如何に自分が愚かな欲求に支配されて生きてきたのかを知ることになった。掘れば掘るほど出てくる物は、決して財宝などではなかったからだ。

「タンスの肥やし」となっていた数々の物質。しかし、実際にタンスは物を食べて消化してくれないため肥やしにすらなっていない。つまり、誰の役にも立っていないわけだ。挙げ句の果てには買った動機すら覚えていないときている。抱えきれなくなったかつての宝は負債そのものだった。

僕が「ミニマリスト」という生き方と出会ったのは、物との付き合い方が敏感になり出した頃だった。

ミニマリストとは

持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人。自分にとって本当に必要な物だけを持つことでかえって豊かに生きられるという考え方で、大量生産・大量消費の現代社会において、新しく生まれたライフスタイルである。「最小限の」という意味のミニマル(minimal)から派生した造語。(コトバンク一部抜粋)

どうして物を追い求める生活をしていたのかを考えると、自ずと承認欲求から成る物欲から突き動かされていることがわかる。自身のブランディングのために、多くの不用品を購入してしまっていた。

残念ながら、過去のブランディングはすべて失敗に終わっている。冷静にフィードバックしていくと、物にこだわっていたのも振り回されていたのも自分だけだったことを痛感した。社会貢献はおろか、周囲の人間関係にすら何ら影響を与えられていなかったのだ。唯一問題があったとすれば、異常な所有欲によって生じた金欠状態だ。お金については以前の記事でも語っている。

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当時の生き方を分析してわかったことは、「今が良ければいい」という考え方は、必ずナイフとなって未来の自分に突き刺さるということ。自分を大切に扱っているように見えて、実は真逆のことをやっていたと思い知った。

人は求めている物が「必要」なのか「不要」なのかを判断ができなくなっている。物が多過ぎて、最早確認することもままならないからだ。障害があれば川の流れが止まるように、余計な物が空気の流れを阻害してしまう。逃げ場を失った邪気が部屋中に充満すれば、やがては怠惰な魔物が誕生するだろう。彼らの存在を受け入れてしまったら最後。決断力、行動力と共にあらゆる力が行き場をなくして滞ってしまうのだ。

部屋は住人の心情が顕著に映し出される場所だ。物質で埋め尽くされた場所に身を置けば、同じく心の在処も闇に帰すだろう。では逆はどうだろう? 不純物を取り除いた空間には、清潔な風が通り抜けるようになり、心も体も健やかになるはずだ。物を持たない生活を送ることは明日への自己投資となり得る。「物が自分の心を見えなくしている。」と気がついた者だけが、ミニマリストとして新たな人生を歩んでいくのだ。

先行者の実体験や教えを読みながら、僕も本格的にミニマリストとしての生き方を模索し始めた。

最初にメスを入れたのは衣服だ。派手なブランドを身に纏わなくとも、昔から変わらず使用され続けている王道なシャツやジーンズを着こなすだけでも格好良く見られるようになった(もちろん、周りから実際に言葉でもらった評価だ)。着回せるのであれば何着も所有する必要もなくなるため、持て余していた服はすべて処分した。ブランドはあくまでも補填に過ぎない。必要だったのは生身の自分自身を磨くこと。知識さえあれば、数も価格も関係ないのだ。

カバンもリュックと手提げが2つほどあれば十分だった。服と同様にシンプルなデザインであれば応用が効く。奇抜なアイテムは返ってコーディネイトの妨げになってしまうもの。今後、柄物を買うときは長い目で見て判断したい。

財布に入っていたカード類も大幅にカットした。昨今はすべてアプリでポイントカードが利用できるため、カードを物質として持たなくてよくなった。というよりも、滅多にいくことのない店のカードを持ち続けていることが無駄だと気づいた。キャッシュレス時代と言えどもまだまだ活躍の場があるお財布。人でもなんでも分厚く膨れ上がった姿はブサイクだ。お金が出入りするのだから、スマートに保ち続けよう。

靴の数もかなり減ったし、必要書類の整理整頓も見直すようになった。結果、玄関には余白ができ、書類の出し入れも探す手間を省略できるようになった。用途を心得た上で正く使用すれば、小細工など必要ない。断捨離を続けていたおかげで、物陰に隠れていた価値を見つけやすくなったのだ。今ではシンプルに生きることの充実感を味わうことができている。

ミニマリストの考え方を応用すれば、生活水準を一気に俯瞰できるようになる。

あなたも既に「このままではいけない」と不安が過ぎっているはずだ。人の直感はあながち馬鹿にならない。物という呪縛に囚われていた経験があるからこそ言えるが、捨てる覚悟を持つことは、自分を信じてあげることに等しい。溢れ返った物質からの解放は、見失っていた自己の救済にもなる。

ミニマリスト思考は、あらゆる面で通用するテクニックだ。自己をしっかり保つためには、物理と精神、両方の装備を軽くして立ち回れるようにしなければならない。何故なら、あなたを駆り立てるエゴはいつでも容赦無く襲いかかってくるからだ。

ミニマリストは、豊かな未来を育むための重要なエッセンスだ。続けることによって、必要なものを選択する能力も開花されるだろう。物に振り回される人生から物を利用する人生を歩むために、是非ともミニマリズムを実感してほしい。

断捨離における秘訣は「1年以上使わなくても困らなかったもの」を基準に捨てていくこと。一気にやろうとしなくてもいい。まずはできる範囲で取り組んでいこう。

書類の整理や服のコーディネイト方法などは本やYoutubeを利用して独学でなんとかなる。今の時代に元手はほとんど必要ない。無料でできることはたくさんあるため、まずは実践あるのみだ。

最後に僕が参考にしている本とYoutubeを紹介しよう。

服に関しては、スタイリストの大山シュンさんで勉強している。男性であれば、彼の指定している必要最低限の衣服を揃えるだけで十分おしゃれに見える。Youtubeも定期的に更新中で、イラスト付きでわかりやすく解説されている本「服が、めんどい」はオススメだ。比較的安価で手に入る物ばかりなので、一度チャレンジしてみてはいかがだろうか。

書類の整理などは「SACHIHOME」さんを参考にした。自分の帰る家くらい、快適に過ごせるようにしたいもの。SACHIHOMEさんの整理整頓術を目視すれば、誰もが真似したくなるのも理解できる。僕はこの動画を見ながら書類関係を整理した。まだまだ不恰好だが、以前よりは格段に見栄えも良くなったし、何よりもコンパクトだ。

持たない生活は奥深い。世界には極限のミニマリズムを追求している人たちもいる。模範として見ることも大事だが、圧倒的過ぎるが故に返ってプレッシャーになってしまうかもしれない。完璧に真似する必要はない。萎縮してスタートできなければ何の意味も無さないからだ。あくまでも基準は自分自身であることを忘れず、無理なく参考程度にやってみるといい。

人間の脳は、原始時代から変わっていない。つまり、祖先のように最小限の道具でも過酷な世界を生き抜けるのだ。反対に、物や情報過多による精神へのダメージも大きい。脳のキャパシティが拡大しているわけではないため、昔とは比べものにならないくらいの情報量に追いついていないのだ。だからこそ、ミニマリストの生き方は、本来の人に適した効率の良い思考法なのだろう。

僕らに物は必要ない。必要な道具はすでに内側に秘めている。さぁ、視界を遮る物体を捨てて、冒険の旅へ出かけよう。

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