”運”は努力も能力も制する

成功者や実業家たちは、運について話すことを嫌うらしい。成功したのは努力や能力値の高さではなく”運のおかげ”だと言われたら、これまでの実績を全否定された気分になるからだ。”運も実力のうち”という言葉があるように、やはり僕らは運というものに人生を左右されているようだ。

努力や能力の高さは悪いことではない。しかし、努力した数だけ成功しやすくなるかどうかは怪しいところがある。死ぬほど努力して成功している人は、死ぬほど努力をすれば成功できると説くだろうが、残念ながら死ぬほど努力を重ねても成功できない人間は巨万といるわけで、結局のところ、その成功者が成功したのは、努力でも能力でもなく、ただ単に”運が良かっただけ”だと結論づけられることになるだろう。身もふたもないような話だが、普遍的な事実である。

僕は「運がないな」とよく思うことがある。が、よくよく考えてみるとそうではないのかもしれないと思い始めた。なぜならば、僕は成功こそしていないものの、不幸のどん底に直面したことはまだないからだ。記憶を遡ってみても、必ず破滅につながっている扉に手をかける前に、考えが変わるか誰かに助けられるかで方向転換している。実力で回避することに越したことはないが、明らかに目に見えない何かに守られているような、そんな経験をしていたのだ。

望んだ理想を手に入れられるかは、すべてはタイミング次第。そのタイミングを目視できるかどうか…この場合、目視できる領域にタイミングが訪れるかどうかが決め手になると思っている。目に見える形で理想郷への鍵を目撃できるかどうかは、それこそ運次第なのだろう。

努力や能力は、その運に近づくために必要な材料だ。だから、運に頼り切って怠けていてもいいという話ではない。来るタイミングに向けて、着々と錆びつかないように磨き続ける必要がある。あくまでも根性論は、運に付随するオプションのようなものだと捉えた方がいいのかもしれない。

人は目に見えるものしか信じることができない。それゆえに、努力や能力といった、比較的視覚化しやすい成果に縋る傾向にあるのだろう。運というものは、どちらかと言えばスピリチュアルなジャンルに分類される夢物語に近い。しかし、運を味方につける方法は多くの書籍や研究などで明らかにされているので、僕たちはもう少し、運という強力な存在に注目した方がいいのかもしれない。