かつて、邪馬台国という超大国を収めていた女王がいた。日本史のどこにも記述が残されていない謎多き人物「卑弥呼」のことである。考古学者が卑弥呼の正体を徹底的に調べ上げる中。その正体は、皇祖神として日本の礎となっている太陽神「天照大神」であるという興味深い説が浮上した。卑弥呼が”神”であったかもしれない可能性を支持されているのはなぜか?今回は映画「THE HIMIKO LEGEND OF YAMATAIKOKU」でも取り上げたテーマ「卑弥呼 天照大神説」について、簡単に解説していこうと思う。
それではしばしの間。私とともに歴史の浪漫の渦へと旅を始めよう。卑弥呼と天照大神、二つの光へと誘う旅へ。
神と女王
一見、突拍子もないとんでも論扱いにされかねない説だが、卑弥呼 天照大神説は、魏志倭人伝や日本の古事記と一定の関連性があるため注目されている。
天照大神とは、国生みの神である「イザナギ」の左目から生まれた三貴子の一柱で、天の国「高天原」を統治しており、天皇家の始祖として祀られている皇祖神だ。天照大神は太陽信仰における巫女としての役割も兼ね備えており、卑弥呼の正式な読み名と言われている「日の巫女」「日巫女」と名前に共通点があるのだ
神と女王。卑弥呼と天照大神についての共通点は、次のように議論されている。
- 宗教的な権威があること。
- 夫がいないこと。
- 古事記にも倭という文字があり、魏志にも卑弥呼は倭の女王と記されていること。
- 大和朝廷の祖先は天照大神であり、朝廷の発端であったとされる邪馬台国の読み名もヤマト国であること。
- 卑弥呼の死去と天岩戸隠れの時期が一致していること。
- 弟がいること。
他にも様々な共通点があるが、この仮説が事実だとして、卑弥呼はいかに神としての存在感を獲得したのだろうか?
一つ予測できることといえば、卑弥呼がシャーマンであり、いわゆる預言者的な立ち位置だったことだ。現代においても、占いの分野は非常に重宝されている。ヴァイキングの時代には、長のそばには必ず未来を読む占い師がついていた。現代でも、占い師と契約している社長は多い。それほどまでに、人間は、未来に不安を抱く生き物なのだ。少しでもその畏怖を軽減しようと、星や気からメッセージを受け取れる特殊な存在に縋り付いてしまうのである。
予言と言っても、何も魔法のような力だけとは限らない。例えば、気象予報士が弥生時代にいたらどうなるだろう?天候に左右される農耕に命がかかっている民にとって、明日の天気情報は大変希少価値がある。一つでも未来の天気を言い当てただけで、きっとその気象予報士は神格化されるに違いない。おそらく卑弥呼も、祭司王、祈祷師と呼ばれていることから、太陽からお告げを受け、民に予言を伝えていたのではないか。そのため、卑弥呼は太陽の化身として崇められるようになった。と考えれば、神と女王の繋がりもより明確となってくるだろう。
皆既日食と天岩戸隠れ
弟のスサノオの傍若無人な行動により、お怒りになった天照大神は、穴に閉じこもり入口を大きな岩で塞いでしまった。日本神話における有名なエピソード「天岩戸隠れ」である。太陽が隠れたことで、世界にはあらゆる災難が降り注いだ。困り果てた神々は、岩戸の前でお祭りを開き、天照大神が顔を覗かせた隙をついて外界へ引っ張り出し、世界に再び太陽が戻ったという物語だ。
実は、天文学上、卑弥呼が死去した前年に皆既日食が起こっており、その時代は天照大神が岩戸に隠れた時代と一致するそうだ。
卑弥呼が亡くなったのち、再び倭国に争いが勃発。宗女のトヨを新たな女王として共立することで、再び平和が訪れる。対する日本神話は、先ほども述べたように、天照が隠れたことで災いが降り注ぐも、岩戸から引っ張り出されて、世界に太陽が戻っている。一度いなくなり、元に戻るという点が非常によく似ているため、日本神話の天照大神の物語は、邪馬台国の一連の騒動がモデルとなっているのではないかと囁かれているのだ。
この線からいけば、天照大神がいた高天原こそ邪馬台国となる。孫となる瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天孫降臨で降り立った地が九州となるため、推測通りに行けば、邪馬台国は九州と位置付けることになるだろう。だが、ここで一つ問題が浮上する。九州地方では、当時、皆既日食は観測されていないのだ。
247年。卑弥呼の死去する前の年で起こった皆既日食は対馬沖から中国大陸で発生しているが、九州ではなかった。翌年248年においても、北陸・信州・北関東にて皆既日食が発生しているが、こちらも九州では起こっていない。もしも卑弥呼と天照大神を繋ぎ合わせるのならば、実際に当時皆既日食が起こった北陸・信州・北関東を邪馬台国と考えるのが筋だろう。
卑弥呼を支えた”二人の男”
卑弥呼は人前に姿を現すことがなかった。側には1000人の侍女がおり、国政を手助けしていた弟が一人。そして食事などの補助をしていた男が一人いたと言われている。唯一、卑弥呼との謁見が許された二人の男。卑弥呼 天照大神説を唱える者たちは、この二人の男が、三貴子にして天照大神の弟。「月読命」と「スサノオ」なのではないかと考えている。
中でも月読命は記紀において非常に登場頻度が少なく、表だった活躍は記されていない。太陽の天照大神。夜の月読といったように、大衆に認知される天照大神の代わりに、月読は影から国を支配していたのではないか。事実であれば、卑弥呼の国政を手助けしていた弟が月読である可能性は高いだろう。巧妙な外交手段をとっていた卑弥呼の策も、実はすべて、弟の月読の案だったのかもしれない。だとすると、夜、影といったように、裏から邪馬台国を支え続けてきた人物であったとしても、何ら不思議ではない。
しかし、以上のような推測で行けば、食事などの補佐をしていたもう一人の男がスサノオということになる。神話に登場する荒ぶる神が、頭を下げて天照大神の面倒を見ていたとは考えにくい。ドラマチックな視点から見るとしたら、姉である卑弥呼の世話に愛想をつかせたスサノオが謀反をおこし、前回の記事(動画)でも解説したような、のちに卑弥呼の敵となる狗奴国の王「卑弥弓呼」として君臨したとも考えられる。
イザナギとイザナミの国生み神話が、他国の掌握による国作り、いわゆる「倭国大乱」を神話化したものと仮定するならば、天照やスサノオ、月読の父であるイザナギの力の強大さは計り知れない。おそらく、子供たちは王である父の命令に従う他なかっただろう。スサノオが天照の面倒を見るように命じられていたと考えれば、補佐役として従事していた考察にも頷ける。ただ、あくまでも想像の域を脱することはできない。
歴史という名の迷宮
卑弥呼と天照大神について解説したが、いかがだっただろうか?
地球の中心を見たことがないように、歴史も過去へ遡らなければ目撃することができない。限られた情報からヒントを見つけ出し、答えのない答えを延々と掘り下げていく他道はないのだ。しかし、人はそこに浪漫を見出し、エンターテインメントとして昇華させるものもいれば、ただひたすらに真実を追求してゆくインディ・ジョーンズまで多様なあり方が存在する。
卑弥呼が天照大神と同一人物であれば、その真相は天皇家に直結するため、安易に手を触れることは許されないだろう。卑弥呼と邪馬台国が存在するにせよ、存在しないにせよ、この世界には、知らなかった方が良買ったことも往々にしてあるということだ。
映画「THE HIMIKO LEGEND OF YAMATAIKOKU」は、空白の歴史浪漫ファンタジーとして、畿内説と天照大神説を取り上げて構成している。ただ、歴史の一端をお伝えする映画ではなく、テーマを「誰もが太陽」とし、昨今の不景気からなる自己肯定感の低下に訴えかける啓発的な要素も盛り込んでいる。この世界で生きている一人ひとりが太陽であり、誰もがその人なりの輝き方ができる。その光は、必ず誰かを照らし救うことができるというメッセージを脚本に落とし込み、映像作品として作り上げた。
是非とも、多くの人にご鑑賞いただければと思う。
あなたは歴史の目撃者となるか?それとも探究者となるか?答えはあなたの行動次第で変わる。卑弥呼について知っている情報があれば、是非とも提供していただきたく思う。いつか事実が開示される、その日まで。
それでは、本日の記事(動画)はこれまで。
ナレーションは、映画「THE HIMIKO LEGEND OF YAMATAIKOKU」の脚本・編集・共同監督 H.A.Pとして監督を務めた、MAGUMAがお送り致しました。また来週土曜日の更新をお楽しみに。
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卑弥呼の映画が「日本神話」と「邪馬台国畿内説」を軸に奈良を舞台に誕生!2023年12月。空白の歴史浪漫ファンタジーが日本から解き放たれる。
映画『THE HIMIKO LEGEND OF YAMATAIKOKU』
【Story】 やりたいことがわからない普通の大学生「神宮司 日向子(じんぐうじ ひなこ)」は、進路と卒業論文が決まらず頭を抱えていた。幼馴染の「吉岡 刃(よしおか じん)」の提案により、幼い頃から見続けている「卑弥呼の夢」を論文にテーマに決めた日向子。教授「天野 照一(あまの しょういち)」協力のもと、日本史最大の謎「卑弥呼と邪馬台国」について研究に取り組むことになる。「この闇深い空白の歴史を、俺と一緒に探求する勇気はあるか?」現実世界に現れる黒い脅威。過去から託された遺産。邪馬台国はどうなったのか? そして、卑弥呼はどこへ消えたのか?日向子の決断は、夢の真相と邪馬台国の謎が直結する壮大な試練の幕開けだった。
出演:なかむらはるな 妃月洋子 冨家ノリマサ 田邉涼 小森貴仁 岸原柊 伽彩璃 長島翼 渡部陽一 高井俊彦 田中要次 村田雄浩
原作・脚本・編集:MAGUMA
脚本監修:佐藤マコト
音楽監修:宇津本直紀 / 藤とおる
撮影監督:藤田祐司
音楽:藤とおる / 葉桐新
キャスティング:清月エンターテインメント / Hizu Factory
主題歌・挿入歌:妃月洋子
共同監督:H.A.P
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