筆者の思想

予算をケチったことで得た教訓の備忘録

お金をかけて最高のエンターテインメントができる場合と、お金をかけなくても最高のエンターテインメントができる場合がある。

どちらが正しいという話ではないのだが、数年間アーティスト活動を続けてきてなんとなく気づいてきたことがある。それは、資金をケチっても大丈夫なアーティストとケチるとアウトなアーティストがいるということだ。

非常にセンシティブかつ重要な話になるのだが、あくまでもいち個人が感じたことなので参考にはならないかもしれない。興味のある方は読み進めてほしい。

自分のことを主軸に話していくが、僕は間違いなく”お金をかけてエンタメを作らなければダメなアーティスト”だった。

空想アニメソングシンガーとしてのステージは、パッケージがよく出来ていると評価されることが多かった。LiveというよりはShowとして成立していたということだ。確かに、活動当初はステージの構成に力を入れていた。ワンマンライブでは、ブッキングライブとの差別化を図るために必ず生演奏に変えて楽器隊を呼んでいたし、CDを作る時もジュエルケースで帯もつけるようにしていた。つまり、パッケージングにお金をかけことを惜しまなかったのだ。

しかし「お金なんかかけんでもええステージはできる。俺はそれでやっていけてる」など、情熱だけでコンテンツ制作に取り組む先人の意見を聞くにつれて、僕の意識も次第に移ろいでいく。意見に納得はいかなかったものの、確かに、最小限のコストでこちらの収益が上がれば万々歳だ。僕は目先の利益に目が眩み、その後の活動にかける資金をケチり出してしまった。

先人のアドバイスを落とし込んで予算を大幅に削減し始めてから、勢いは自然と衰退していった。僕は楽器隊を呼ぶことをやめ、CDもできるだけ格安で作れるようジュエルケースでの販売をやめてから、本来作りたかったエンターテインメントを提供できなくなった。予算の削減とともに、自身の意欲まで削減してしまったことを後になってから気がついた。観客動員数も、そのタイミングから少しずつ減っていった。

自身のコンテンツとの向き合い方を遡っていくと、冒頭でも書いたような2種類のスタイルに分かれることがわかる。

僕のようなShowを作り上げるアーティストにとっては、どれだけコンテンツにお金をかけられるかがエンターテインメントの勝敗を分ける。一方で、シンガーソングライターのような楽器一本で語りかけるアーティストにとっては、舞台に余計な装飾は必要しない。ただ内に秘めたる想いを届ける職人タイプだからだ。僕にアドバイスをくれた先人は、間違いなく「卓越した技術さえあればお金なんて必要ない」的な”職人タイプのアーティスト”だった。

僕自身の後悔の話になってしまっているが、大事なのは自分がどちらのタイプのアーティストになりたい or なのかをしっかり把握しておくことだろう。ただでさえ先人のアドバイスは説得力を秘めているため、右も左も分からない新米となればイエスマンになりかねないからだ。

お金と情熱はかなりの割合で比例している。ない袖はふれないのも事実だが、自分の魂を持って発信するコンテンツなら、出来うる限りの資金は投入したいものだ。しかしその前に、自分が今ケチっても大丈夫なアーティストタイプなのかを知っておこう。間違った舵取りも早めに気がつけば大丈夫かもしれないが、数年後にようやく理解できたとなると話は変わってくる。失った時間は取り戻せないからだ。

大衆はバカではない。こちらが出し渋ってしまうとステージングに表れすぐにバレてしまう。

セルフプロデュースの場合は特に、使うべきところとそうでないところを分析して、予算の使い道を考えていくことが大きな課題となるだろう。僕も過去の教訓を生かして、次のステージへ移っていけるよう邁進しようと思う。

それでは、また。

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