無為自然の教えの中に、ただ宇宙の流れに身を任せて生きることが説かれている。この世で起こっている何もかもはすべて同一であり、そこに境界線はないらしい。老荘思想と呼ばれる飾らない生き方を聞いた僕は、多くの人間の中で起こっているどの問題よりも難題な教えだと思った。
テクノロジーが発展し、AIの登場によりビジネスも高度な多様性を発揮され始めた。可能性の間口が次々と開いてゆき、閉鎖されていた才能の発信場所も今や数えきれないほど存在している。それはもう、絞りきれないほどに。
この進歩を楽園とするか、はたまた地獄とするかはその人次第となるが、僕は常々言っている「調和」を尊重し、中間地点から俯瞰して観察してみることにした。
メリットとしては、誰にでも夢を掴み取れるチャンスが巡ってきたことだろう。一昔前なら馬鹿にされていたYoutuberも今や立派な職業だ。ただのスーパーの店員だったヒカキンさんも、つい最近では２０億円の賃貸と契約している。chatGPTも、個人のみながらず多くの企業によきパートナーとして活用されていたりと、みな未来に向かって多くの希望を抱けるようになった。
デメリットは、選択肢が多すぎるがために才能のパラメーターも分散されていることだろうか。つまり、一点集中型で突破しづらくなってきており、どの道を選んだとしても成功の近道があるが失敗のリスクもついてくる。情報量の多さに動くに動けない状態になった人も少なくないのではないだろうか？と、僕は思っている。
実のところ、僕は今の時代にデメリット的思考を抱くことが多い。もともとキャパシティを広く持っていないため、色々な事象を見聞きしているとすぐに疲れてしまうのだ。なのでここ数日は、精神面の整理整頓を兼ねてブログに日々感じたことを執筆している。
幸福の物差しは人によって違うが、僕は進化を追求する人類の風潮にくたびれてしまう人間だ。進化は悪いことではないのだろうが、僕の肌には適応できないところがある。そんな時に聞いた無為自然という思想が、足りない栄養分を与えられたかのようにスッと胸の中に入ってきたのだ。知識や周囲に縛られず、ただ自然に宇宙の法則に従って生きることに、自分の求めてやまない真の幸福が眠っていると思った。
しかし、いきなりそれをやるには難しい。”何もしない”をできる人はどのくらいいるのだろうか？そもそも、何もしないを”した”時点で、既に何かをしたことになり、思想が破綻してしまう。と、ここまで考えて、僕はあることに気がついた。
今、僕が巡らせた疑問こそが知であって、言っている側から僕は知によって束縛を受けていたのだと。
要するに、僕らは言葉による深掘りをしてはならないのだろう。なぜなら、言葉自体が人間の知であり有限だからだ。以前、どこかの記事で哲学の限界点を書いたと思う。言葉を持って掘り下げていっても、結局は言葉という概念に縛られたままで真理には辿り着けない。本当の答えは、言葉や物理を超越した世界にあるのだと。
何もしないとは、無になることだ。徹底的に無になり、雑念は受け流さなければ休息は得られない。僕が現代に良い印象を抱けないのは、無になるにはあまりにも厳しすぎるほど、テクノロジーによって情報が溢れかえっているからだ。
かくいう僕もこうして情報発信をしているので正々堂々ヘイトを飛ばすことはできないが、世界規模で施策を行わない限り、本当の意味で脳を休ませることは困難なものになるだろう。しかし、全世界で一斉に機能を停止させることなど不可能なため、僕らは自分の力で無になることを選択し、無になれる生活環境を探していく必要がある。個の時代は終わったとよく言われているが、この世は個人の決断力で物事が動いていく。なので、太古の時代より個の時代は永遠に続いているのだと僕は思う。すべては、僕ら一人ひとりの判断次第で変わっていくのだ。
瞑想・マインドフルネス・リラクゼーションが衰退しないのには理由がある。それは、人は日々癒しを求めているからだ。
生きている限り、人から痛みや苦しみを取り除くことはできない。問題はいつもついてまわる。その恐怖とどう付き合っていくのかが重要で、その対策として求められているのが上述したような取り組みなのだ。
この情報量は、例え千手観音であろうとも掴みきれないだろう。それほどまでに膨大で形がない代物だ。だからこそ僕らは、敢えて何もしないことを選ばなければならない。ずっとでなくてもいい、たまにでもいいから自然に身を委ねてみるのだ。
機能不全となり、理想を実現できないほどまで疲弊しないためにも。
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