筆者の小説・詩

詩「空白」

暮れなずむ町の空を見ていると、どこか寂しい気持ちになる。青紫に滲みゆくマジックアワーが、今日という一日を余す所なくかじり尽くせたのかどうか、僕らを判定するようにじわじわと漆黒の渦へと誘ってゆくからだ。

焦燥感に駆られている己の姿を俯瞰して思うに、きっとまだ、何かしらのやり残したことがあるに違いない。それが何なのかはさっぱり見当もつかないが、一つ言えることは、僕は今の今まで何をして過ごしていたのか思い出せないということだ。焦燥感は危機感に変わり、空白の時間を空白たらしめた自分自身の無意識に罪の意識を感じずにはいられない。

やれることはあったはずなのに、やれることがなんなのかを把握できていない愚かな思考は、考えることをやめた腑抜けと言われるに値するほど、無力で情けない生き様へと成り下がった。

今を感じて生きている人間はどれくらいいるのだろうか?皆、今を生きているにも関わらず、過去や未来のことしか頭にない。一方は記憶と戦いを続け、もう一方は起こってもいないことに想いを馳せ続ける。本当に大事なのは今を生きることだけなのに、誰も今という有限の価値に目を向けない。シンプルさを失った人類は、知識という名の呪いにかかり、日々、病み続けている始末だ。僕は今まで何をやっていたのだろうか。ちゃんと「ここにいたのだろうか」。日は沈み、間もなく夜が訪れる。

ああ、終わってしまう。もうすぐ今が終わってしまう。僕は去り行く今にいた自分の手を必死に掴もうとするが、まるで量子レベルで細分化されたようにするするとすり抜けていってしまう。もう戻ることはできない。取り戻すことはできない。今だったものは過去となって、後悔とともに精神を蝕み心の中に巣食い続けるのだ。

どうして、行動を起こさなかったのか?と。

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