筆者の評論

映画「ナンシー・ドリューと秘密の階段」鑑賞・レビュー

監督:カット・シア 主演:ソフィア・リリスの映画「ナンシー・ドリューと秘密の階段」を鑑賞したのでレビューしていく。

※僕のレビューはネタバレを含む場合があります。興味のある方のみご一読ください。

ロングボードを乗りこなす、頭脳も運動神経も抜群な女子高生・ナンシー。友人の親戚が住む古い屋敷に幽霊が出ると聞き、真相を明らかにするべく調査に乗り出した。次々と起こる不可解な現象に立ち向かいながら、彼女は屋敷に隠された謎を明らかにしていく。

映画「ナンシー・ドリューと秘密の階段」あらすじ

児童向け推理小説「少女探偵ナンシー・ドリュー」シリーズから映画化された作品。正直なところ、内容の薄さが目立って特別感銘を受けるほどではなかった。おそらく、ITのリメイクシリーズで評判を得た女優「ソフィア・リリス」を看板にしたかっただけだろう。なので、映画を観た!というよりは、ソフィア・リリスのプロモーションビデオを80分以上観せられたと表現した方が正しいかもしれない。

もちろん、僕は原作の情報など一切知らなかったし、ナンシー・ドリューシリーズが他にあったことも初耳だった。てっきり新しい映画かと思って観たものの、主演のソフィア・リリスのキャラクター性に感心するくらいしか見応えがなく、あとは愛と勇気と友情を燦々と歌い上げる内容。つまらないことはなかったし面白かったが、いかんせん物足りなかった。

超常現象を相手に繰り広げるジュブナイル的な要素を期待しつつも、襲いくる闇はタネも仕掛けもガッツリ存在。金に目が眩んだ大人から勝利を勝ち取る王道ストーリーだ。

本作から学べるのは、度が過ぎた正義は破滅をもたらすという抽象的なテーマだろう。

主人公のナンシーは、持ち前の根性から友人に悪戯をする男をとことん懲らしめる。しかし、そのやり方があまりに過激すぎたため、事態は警察沙汰になり大騒ぎ。この時点で、ナンシーの欠落している部分が明らかになる。つまり、加減を知らない女の子なのだ。ここでミソとなってくるのは、本作の悪役たちの存在。ナンシーの暮らす村には鉄道を開発する施策が計画されているのだが、悪役は鉄道反対を行使する男。ナンシーの行きすぎた正義と悪役の行きすぎた正義が対となることで、観客にテーマを伝え、ナンシーは「過激な正義はさらなる悪を生む」という教訓を得ることに繋がる。

しっかりとしたテーマがあるにも関わらず内容が薄く見えてしまうのは、テーマを浮上させるほどの物語の上下運動が浅過ぎたことが原因かもしれない。ソフィア・リリスを使いたかっただけに見えてしまうのも、おそらくこの辺りの物語の掘り下げが甘かったことが影響していると個人的に思う。

まぁ、作家目線で観てしまうが故に気になっているのかもしれないが、普通に観ればそこそこ楽しめる映画ではあるので、興味のある方は是非ともご鑑賞いただきたい。


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